2004年12月21日

日本版LLP(有限責任事業組合)制度の創設の提案の公表

平成16年12月17日、経済産業政策局長の私的研究会である、「有限責任事業組合制度に関する研究会(日本版LLP研究会)」は、研究会におけるこれまでの検討結果を踏まえ、有限責任事業組合(日本版LLP)制度の骨格についての中間的なとりまとめを行い、「有限責任事業組合制度の創設の提案」を公表しました。経済産業省は、この制度の創設について、次期通常国会に法案を提出する予定です。

有限責任事業組合(日本版LLP)とは、英米等のLLP(Limited Liability Partnership=リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ=有限責任組合)を参考にして創設される、組合の出資者の有限責任を確保する民法組合の特例制度です。  その特徴は、次の4点です。

1.出資者全員の有限責任制~出資者は、出資金の範囲で責任を負う。
2.内部自治の徹底~組織内部の取り決めは自由に決めることができる。すなわち、株主総会や取締役会などを設ける必要がない。
3.柔軟な損益分配~労務やノウハウの提供による各自の事業への貢献度合いに応じて、出資比率と異なる柔軟な損益分配を行うことが可能。
4.構成員課税(パス・スルー課税)~日本版LLPには課税されずに、その出資者に直接課税されるため、LLP段階で法人課税が課された上に、出資者への配当に課税されることを回避できるメリットがある。

経産省が主導する日本版LLP制度は、現在行われている商法改正によって新設される「合同会社(日本版LLC)」とほぼ同じ特徴を有する制度です。合同会社と同じような制度を、なぜ新たに設けるのか、その実質的理由は税務上の取り扱いの差異があるからです。

米国の例を見ると、合同会社(日本版LLC)が普及するかどうかのポイントは、合同会社に構成員課税(パス・スルー課税)が適用されるか否かにあります。ところが、現行の法人税法では、法人格を有する団体に法人税課税を行う原則になっているため、この原則を変更しない限り、合同会社に構成員課税(パス・スルー課税)は適用されません。なぜなら、合同会社(日本版LLC)はあくまでも商法上の会社であり、商法上の会社は全て法人格を有するからです。

そこで、現行税制でも構成員課税が行われている「(法人格を有さない)民法上の組合」をベースとして、合同会社と同じ機能を有する組織体が作れないかという視点から導入されるのが、今回の有限責任事業組合(日本版LLP)制度です。

ただ、「財務省は現行の構成員課税(パス・スルー課税)制度のあり方を見直す」という観測がながれており、スムーズな制度導入が進むかどうか未知数です。

来年以降の税制改正では大きなテーマになってきますから、日本版LLPの動向について、今から注目しておく必要がありそうです。

2004年12月21日(担当:後 宏治)

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