新会社法では合名会社・合資会社の株式会社への組織変更が可能になります
平成18年4月1日に施行が見込まれている新会社法では、現行の商法で認められていない合名会社・合資会社の株式会社への組織変更が認められることになる見通しです。
合名・合資会社には、株式会社や有限会社(以下、株式会社等という)と違い、設立手続や運営が簡便である(設立時における定款の認証や出資金保管証明書が不要。取締役・監査役・株主総会等の運営・議決機関の設置も不要)、資本金に関する規定がなく少額の資本でも会社の設立が可能である、無限責任社員には労務出資や信用出資も認められている(商68、150、民667第2項)、といったメリットがあります。
反面、株式会社等と比較して信用性が低い、無限責任社員は会社の債務に対して直接無限責任を負わなければならない(商80、147)、持分譲渡においては他の社員の同意が必要である(商73、147、154)、無限責任社員の死亡時の会社解散リスク、社員退社時の持分払戻による多額の資金負担リスクといった大きな経営・事業承継上のデメリットもあります。
そのため、合名・合資会社の株式会社への組織変更のニーズは高いものがありましたが、現行の商法においては、合名・合資会社の株式会社への組織変更は認められておりません。
そこで従前より株式会社を新設し、そこに合名・合資会社を吸収合併させるという方策がとられていました。この方法では適格合併とすることは容易ですが、特定資本関係の発生が株式会社設立時であり、繰越欠損金及び含み損の引継ぎで制限を受けることになってしまうという税務面の問題(UAPレポートVol.1参照)があります。
要綱案によると、新会社法のもとでは、社員の全員の同意と、知れたる債権者への個別催告等の債権者保護手続により株式会社への組織変更が可能となる見通しです。組織変更においては原則として課税関係は発生いたしません(法基通1-2-2)ので、課税関係がネックで組織変更できなかった合名会社・合資会社に会社法改正は朗報となることでしょう。
(注)新会社法の内容は「会社法の現代化に関する要綱案(第三次案)」によっています。
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